初投稿が特集に掲載され、胸が高まりました…
◆私の心に残るメロディ100◆
本誌3月号にて、”心に残る想い出のメロディ”というテーマで、広く読者アンケートを募集したところ、たくさんの思い入れたっぷりのハガキが返ってきた。その中でも”これは!”というものを25曲選び出し、ここに一挙公開! CDジャーナル誌1997年5月号より
JS・バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第一巻 第四番 嬰ハ短調
私は当時19歳、京都で板前の見習い中、仕事で指を切り、近くの外科に駆け込みました。
そこは和洋折衷の明治時代と思しき建物。
玄関から木製の古びた廊下、階段を上がり、二階は20畳はあろうかという診察室。
大きな窓からは東山の山並みを望み、階下の裏庭には草木が生い茂る、表道りからは遮断された別世界でした。
暫しベッドに腰掛け、その景色と、静けさの中流れて来る、FM放送からの不思議な音楽に耳を傾ける私は、煩雑な日々を忘れ、大きな安らぎに心満たされるのを感じました。
傷が治るまでの通院は、それ以後私の密かな楽しみでした。
金沢に帰り、「平均律」を買い漁り、しかし新盤を含めて、それに優る演奏は未だ出会えません。
長短12の調を一巡して戻る、仏教の輪廻思想にも通じるそれは、神秘、不安、畏怖…人間界の汲めど尽きなあらゆる感情を包含していると感じます。
私の葬儀には、それを流して欲しいと、今から妻に頼んでいます。(大袈裟かな・・)
平均律クラヴィーア曲集って何?
鍵盤楽器(=クラヴィーア)のための長短24調による48の前奏曲とフーガ。
この独: "Clavier"(クラヴィーア)とは当時のドイツ語表記であり、20世紀の新高ドイツ語正書法では独: "Klavier"と表記し一般にはピアノを意味する。ただしバッハの時代にはまだピアノは普及しておらず、当時はチェンバロ、クラヴィコード、ときとしてオルガンも含めた「鍵盤楽器全般」を意味した。
ピアノ演奏を学ぶものにとって最も重要な曲集の一つで、ハンス・フォン・ビューローは、この曲集とルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタを、それぞれ、音楽の旧約聖書と新約聖書と呼び、賛賞した。
原題の"Wohltemperiert(e)"は一般に「平均律」と訳されているが、正しくは「程よく調律された」という意味で、20世紀の平均律(独: gleich schwebende Temperatur)を意味するものではない。バッハが当時意図した調律法はヴェルクマイスター(シャープやフラットが4個以下の調ではミーントーンに、シャープやフラットが5個以上の調では純五度でピタゴラス音律に近くなる)であったと推測されている。
バッハ以前にも何人かの作曲家が多くの長短調を駆使した作曲を試みている。中でもヨハン・カスパール・フェルディナント・フィッシャーの「アリアドネ・ムジカ」は、20の調による前奏曲とフーガを含んでおり、バッハがこれを参考にしたとの説もある。
フレデリック・ショパンの「24の前奏曲」や、ショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ」は、このバッハの曲集に触発されたものである。
1977年、グレン・グールド演奏による同曲の録音が、人類を代表する文化的作品として、ボイジャーのゴールデンレコードに収録され宇宙に打ち上げられた。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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